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一番強い形で乗り切ったT・Fコンビによる熱い砂のGI決定戦!

注目の第12回「「ジャパンカップダート」は、下馬評通りトランセンドとエスポワールシチーの砂の大将格によるマッチレース的様相。昨年のジャパンCダート優勝馬トランセンド。対して一昨年の優勝馬エスポワールシチーが、がっぷり四つに組んでの一戦。
昨年5月の東海Sから8戦4勝2着4回。GI3勝で連対をはずしていないトランセンドが1番人気。直前のみやこSを楽勝して勢い上がるエスポワールシチーも単勝2・8倍でトランセンドと互角の支持。こうなると、どんなふうに乗ったらライバルに勝てるのか、トランセンドの藤田騎手、エスポワールシチーの佐藤哲騎手は、それぞれ思案を巡らしていたはずです。No1_320_2
そして枠順が発表されたときに、再び熟考を要することになりました。ここからは二人の騎手の心理状態を、私の独断で考えてみました。
トランセンドの藤田騎手は、この大外16番を知ったときに「どうしょう、エスポワールが6番枠だし、同じように出て行っても、コーナーで前に行かれてしまう。池添のトウショウフリークが強引に来るだろう。3番手で行くか、3コーナーで外から並びかければ力でねじ伏せられるかも知れない。いや、まてよ、この馬が一番強い競馬ができるのは、ハナを切る形じゃないか。確かに16番の大外枠でロスがあるかも知れないが、1コーナーを回った時点で、先頭に立っていれば、なんとかなる、きっと押し切れるはずだ」と考えたはずです。
一方、エスポワールの佐藤哲騎手は「しめた、トランセンドが16番か。これならチャンスだ。向うはこの枠だから、池添の馬が行ったら控えるだろう。こっちはそれを見て仕掛けられる。この前のみやこSと同じ形で競馬をすればいいんだ。具合もいい感じだし、よし、いけるぞ!」と力コブを握りしめたはずです。この両者の見方は結果に直接結びつくことになったのです。
スタートと同時に藤田騎手が必至の形相で、トランセンドを押して押して何が何でも主導権を取る構え。その隣りの池添トウショウフリークも逃げる構えを見せましたが、藤田騎手の気迫に圧倒されて仕方なく2番手。トランセンドを前に見る形で佐藤哲エスポワールシチー。藤田、佐藤哲、二人の騎手の読み通りにレースは流れて行きます。
昨年、トランセンドが逃げ切ったときの前半3ハロンの入りは35秒9、1000m通過が60秒0。今回は35秒8で60秒9。前半の3ハロンはほとんど同じようなペースで、後続の2頭も控えてくれたくれたことで、一息入れられた形になりました。ということは藤田騎手の目論見どおり、トランセンドのペースとなったわけです。

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それでも、さすがに佐藤哲騎手もこのままではマズイと思ったのか、相手をトランセンド1頭に絞り、勝負どころの3角過ぎにトランセンドの真後ろの外でスパート態勢。
4コーナーをトランセンドが先頭。すぐ後ろにエスポワールシチーで、その少し後ろからラヴェリータ、ダノンカモン。先行したトウショウフリークの姿はなく、好位置で展開したニホンピロアワーズも早々に脱落。快調に逃げるトランセンドを捉まえきれないエスポワールシチー。となると、トランセンドの独壇場。二の足を駆使して、結局2馬身差の圧勝劇。エスポワールシチーも最後は力尽きて、最内からゴール寸前強襲したワンダーアキュートにハナ差、差し込まれて無念の3着。
勝ちタイムが1分50秒6で、昨年が1分48秒9。もっとも、昨年は脚抜きの良かった、やや重馬場のコンディション。前半3ハロンは昨年を上回るペースだったことから判断して、やはりハイペースが後半に影響したようにも思います。それでも優勝したトランセンドは凄い馬です。また結果的に3着だったエスポワールシチーも、相手のペースに合わせざる得ない展開だったもので、佐藤哲騎手も「今日のところは相手が強かったということ。次は負かせるように頑張ります」とサバサバした表情でした。
私が狙ったミラクルレジェンドは位置取りが最悪になってしまいました。勝負どころで動くに動けない形。直線で外から差を詰めてきましたが時すでに遅しで6着。それでも2着馬とわずか0秒2差。「もう少しスムーズだったら、もっといいところに来たね。残念!」悔しそうでした。

考えさせられた国際招待に価値のある馬と、箸にも棒にもの招待馬・・

 今年の第31回目のジャパンカップは、その年の凱旋門賞で1、2、3着馬が揃って登録。結局、スノーフェアリーが回避したものの1、2着馬が出走。ともに3歳牝馬で世界のホースマン注目の一戦となりました。とりわけ、凱旋門賞で5馬身ちぎり捨て、レコードで優勝したデインドリーム。この稀代の女傑が熱い関心を集めました。
No1  当日は我が日本が誇る女王ブエナビスタ。そしてデインドリームの2頭の牝馬が1番人気を激しく奪い合う熾烈な争い。結局、10円の違いでデインドリームが1番人気に支持されてジャパンカップがスタート。
 戦前の予測では逃げ一手の米国ミッションアプルーヴドが主導権を取って、同じように先行タイプの仏シャレータが2番手。好位置にはヴィクトワールピサ、トゥザグローリー、トーセンジョーダン、ローズキングダム。そこにはデインドリームもいるだろう、という見方をしていました。
 その予想通りにミッションアプルーヴドが主導権を取り、2番手にはトーセンジョーダン。レース後、トーセンジョーダンのウイリアムズ騎手は「予定では4、5番手のつもりでしたが、アメリカの馬が逃げたので、これは遅くなると思って2番手をキープしました」。この彼ならではの判断が、実にタイムリーな結果につながるのです。
 一方、先行するはずだったシャレータは中団の馬群の中。ルメール騎手は「スタートしてから彼女が行きたがっていたので、息を入れさせてリラックスさせるような乗り方をしました。でも、直線で追い出したら反応がありませんでした」と、コメント。
 このシャレータが控えたことにより、流れが極端なスローペースに落ち込んでしまったのです。前半の3ハロンが37秒1、1000m通過は61秒8。半分の1200m通過で1分14秒1。同じ日の6レース最下級条件の500万クラスが35秒6で、1200m通過が1分11秒8。半分で2秒3も500万よりも遅いのです。
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 この超スローペースに、これはまずい、と考えたウインバリアシオンの安藤勝騎手は、最後方2番手から向う流しで外をスルスルと進出。「この馬場でずっと外を回りたくなかった。本当は内に入れたかったんだけどね。それが出来なかったので、思い切って行ったんだ」と安藤勝騎手。
 3角で2番手のトーセンジョーダンに一気に並びかけたウインバリアシオン。トレイルブレイザーにトゥザグローリーが続き、ブエナビスタがその後の内目でスパートの機を窺うような態勢。人気を分けた注目のデインドリームは後方グループ。中団にローズキングダムと、その後ろにエイシンフラッシュ。3番人気のペルーサも同じような位置取り。ヴィクトワールピサは長期休養明けということからか、最後方で折り合いに専念。
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 あまりにもゆったりとした流れから、勢いペースアップしたのが4角手前のラスト4ハロン。逃げたミッションアプルーヴドを追って、後続各馬もジワジワ進出態勢。直線では早々に脱落したのがミッションアプルーヴド。その外から先頭に立ったウインバリアシオン。トーセンジョーダンもその外から並びかけて、グリーンとピンクの帽子が並んでゴールを目指します。
 ブエナビスタもグイグイ肉迫。いつもより早目にジャガーメイルがインをついて追い上げます。デインドリームは直線大外に進路。ウインバリアシオンも良く粘っていたものの途中からスパートしたことが最後の最後で伸び脚を欠き、トーセンジョーダンが一気に抜け出し先頭。そのところに外から馬体を併せてきたのが女王ブエナビスタ。2頭の激しい叩き合いは末脚に勝るブエナビスタに軍配。クビ差遅れてトーセンジョーダン。そしてゴール前でグイと伸びたジャガーメイル。
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 ウインバリアシオンが5着でデインドリームが6着。凱旋門賞圧勝馬がゴール前で一瞬見せた末脚が彼女のプライドでしょうか。シャレータが7着でエイシンフラッシュとローズキングダムが7、8着。ヴィクトワールピサは13着と惨敗。またゴール前で手綱が動いていなかったペルーサはシンガリ負け。天皇賞の反動でしょうか。
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 唯一、ラスト33秒台の末脚を駆使したブエナビスタ。1着降着となった昨年の無念を見事に晴らしました。当時の優勝馬ローズキングダムとの浮き沈みの激しさを見た思いがします。
 と同時に、鳴り物入りで来日し、1番人気だったデインドリーム。スタートの位置取りの不利はあったものの、結局、掲示板にもその番号が点滅することはありませんでした。シュタルケ騎手は「凱旋門賞のときのような本来の彼女の状態ではなかった」とか。例年ですが、具合の良さをアピールした公開記者会見のときと、あまりにもニュアンスが異なることに驚かされます。
 その先行力を生かすこともなく敗れたシャレータも同様。それでも、凱旋門賞2、3着であれば、ジャパンCの招待馬として十分な資格と理解が得られます。
 ところが、米国のミッションアプルーヴドはあまりにもひどい14着。この超スローペースを、絡まれることもなく楽に主導権を取り、まさに一人旅に持ち込めながら惨敗。これは能力云々よりも、体調に大きな問題があった可能性があります。当日の500万クラスであれば時計比較から4着が精一杯でした。
 出走していたのか出ていなかったのかわからないような12着のサラリンクス。関係者、家族の日本観光が主体のような参戦、こういった馬の招待に多額の出費を払う招待制度は、そろそろ廃止したほうが賢明のような気がします。暴騰する円高の中での2億5000万の優勝賞金。参戦したいのであれば自前で来日して下さい!それくらいの強気にJRAはなってもいいはずです。それがジャパンカップのレベルを上げることになるのだと思います。