競走馬の能力、実績、勢いというものは、これほど簡単に崩れ去り、モロいものなのか、今年の桜花賞を見ていて、これまでクラシックでは味わったことがない虚脱感にさいなまれました。
今年の3歳牝馬路線は、2勝以上の重賞勝ちがゼロ。混戦ではあったのですが、それでもそのセオリーとか、伏兵馬の台頭、大駆けがあったとしても、一応の範囲内と考えていたのですが、今回のケースはその範疇を飛び越えてしまいました。これはある種の事件なのです。
優勝したレジネッタは12番人気ではあったのですが、エルムS2人気で3着、フィリーズレビューが3着。たまたま人気が集まらなかっただけで、実績からは十分に優勝を狙える範囲に位置していた馬です。一瞬の脚を最高に生かし切った小牧太騎手のファインプレーによるところも大。阪神ジュベナイルFで計時した自己ベストの1分34秒3には及ばなかったものの、能力をフルに出し尽くした印象があります。
このレースで3着だったソーマジック。直前のトライアル、アネモネ賞を制して、3連勝と勢いがあり有力候補の一角。3着は当然といえば当然の結果。
ところが、謎の馬が2着のエフティマイアと、リトルアマポーラに先着したハートオブクィーン。15番人気と16番人気の馬。もともとエフティマイアは2連勝し、新潟2歳Sも制して、一躍2歳牝馬の最高位にランク。それが、登り詰めた山の頂上から転げ落ちるように転落。京王杯2歳Sが2番人気で13着の大敗。そして阪神ジュベナイルFがなんとブービーの17着。フェアリーSは相手に恵まれたはずなのにルルパンブルーの5着。更にOP特別の菜の花賞では、現在も500万で苦戦を強いられているマルターズオリジンやローズカットダイヤ、エールドクラージュに先着を許す有様。桜花賞前のクイーンCでもリトルアマポーラと大人と子供の違い的内容で完敗。この内容で格段に強力メンバーとなる桜花賞で狙える根拠があまりにも希薄。強調材料がほとんど見当たらないのです。
そして、4着に大好走をみせたハートオブクィーン。京王杯2歳S10着、阪神ジュベナイルF11着。フェアリーS12着、桜花賞トライアルのアネモネSが14着。こんな大敗続きの成績の馬が、リトルアマポーラや2歳牝馬代表に輝いたトールポピー。更に阪神ジュベナイルF1番人気のオディールに先着するのですから、これまで積み上げてきたものは、いったい何だったのか、予想するものにとっては、今年の桜花賞パズルだけは、永遠に解けそうにありません。
と同時に、距離が2,400mに延びるオークスではまた何かが起きるのか、ドラマチックなパズルは、また新たな難題を提示しています。
何をもたらしたのか? 桜花賞パズル事件!($・・)
☆満開の桜を見て、桜花賞出走の馬主さんと奏でる宴かな(^^♪
東京の今年の桜の開花は、例年よりもやや早かったそうですが、開花宣言のあと、強力な低気圧に見舞われたとはいえ、懸命に枝にしがみ付いてくれました。ソメイヨシノの君、楽しませてくれてありがとう! 感謝感謝です。
過日、近くの弁天の森というところに行ってきました。川を挟んで、おお、我が世の春。ところ狭しと、ソメイヨシノの君が咲きほこりけり。一陣の風にひらひらと舞う花びらに、一時、一瞬の雅の世界の絵巻物物語。
桜といえば、今週は桜花賞。4月8日夜、西麻布交差点そばにある鳥料理の「鳥萬み」で、馬主の伊達敏明さん、弟の泰明さん兄弟と会食。敏明さんとは何度かこの店に来ており、紹介された女将さんが粋でこざっぱりとした情の深い評判の方。早乙女太一の父でもある劇団朱雀の座長でもある葵陽之介さんを案内したこともありました。
「本当にうまいすねー。太一が鳥料理好きだから、食べさせてあげたいです」と、陽之介座長。女将さんも私の紹介で太一ファン。歓喜する女将さん。もちろん、この日以来、座長にも肩入れ。
「アベコーさん、今週の桜花賞は難しいでしょう」と敏明さん。
「まあ、重賞を2勝しているのが1頭しかいませんからね。人気もかなり割れそうだし、かえって穴党としては、やりづらいんですよ」と私。
「ああ、なるほどねー‥。うちのにもチャンスはありますかね?」と敏明さん。
「シャランジュですか。そうそう、遅れましたが桜花賞出走おめでとうございました」
「ありがとうございます。うちの牧場から出た馬で、クラシックに出走させられたことが、もの凄く嬉しいです。やはり、牧場の最大目標でしたから」と泰明さん。
「いやあ、◎を打ったクイーンCで10着に負けたときには、どうなることやらと思ったのですが、アネモネSで良く巻き返してくれましたよ。もっともその前の週、村田騎手がずいぶん良くなってきています、と言っていたし、本間調教師も間違いなく良くなっています、というものだから重い印をつけないと、思って○にしたんです。この時は◎をソーマジックと決めていたものですから、○か▲か迷って結論は○。まあ、大正解でしたね。笑い」
「さすがアベコーさんですね、まあ、テンビーの仔でガサはないけど、いい根性を持っていますよ。この馬は前に四位クンに乗ってもらったんですけど、やはり、いつも乗ってくれる村田クンに乗せて下さい。と調教師にお願いしましたよ」と敏明さん。
「彼も意気に感じているはずです。今年はどの馬にもチャンスがあるから、シャランジュの末脚は楽しみです。新潟2歳Sのラスト33秒0の脚は忘れられません」と私。
と、板場から板長がこられて
「今夜は前祝ですか。シャランジュの旗を作って応援にいきますか」というと、
「板長、馬主の間では昔から前祝はNGなんですよ。マナーかな」と敏明さん。
「まあ、まったく入着すら難しい馬ならともかく、今年の場合はほとんどの馬主さんが、いけるかもと、思っているわけですからね‥」と私。
まあ、小柄なファイター・ウーマン、シャランジュが無事に走って来てくれること。できれば掲示板に、もっというなら馬券の対象に。勝ってまた鳥萬みで、今度は祝杯を!と願いつつ春の西麻布の宵は更けて行くのでした。