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◎アンコイルドでヨシャー!一転まさかのヒットザターゲットに卒倒!!

これは事件です。まさか、まさかの事件です。GⅡ「京都大賞典」で、11番人気ヒットザターゲットが大外から力強く直線一気に強襲。見事に差し切り勝ちを決めたのです。これは悪夢?!目をこすったほどです。

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宝塚記念以来の実戦。その宝塚記念でゴールドシップから2秒4もちぎられたドンジリ負け。小倉大賞典を勝っているように小倉巧者。京都は5戦連対ゼロ。3着が1度あるだけ。2400mの距離でも良績なし。時計も平凡。ほとんど、いやまったく良いところがないのです。

そんな馬が皐月賞、菊花賞、有馬記念、宝塚記念を圧勝したゴールドシップを負かせるなんて、さすがの私の夢にも出現してきませんでした。

ところが、競馬というドラマは、ときに予測のつかないドラマを引き起こすことがあるのです。

戦前、私は2400mという距離、そして強力な逃げ馬が不在だったことから超スローという見方をしていました。昨秋の福島500万から破竹の勢いで4連勝。一気にオープン入りして、先の函館記念では秋の天皇賞に直行する人気の一角トウケイヘイローの2着。札幌記念でもひどい重馬場と闘いながら再びトウケイヘイローの3着。間違いなくスケールアップしてきているはずでした。しかも、スローの流れを前で対応できる展開上の魅力があったのです。ゴールドシップ、トーセンラーの有力馬は、このあとが本番のGI。アンコイルドにしてみれば、GI出走にはどうしても賞金面での加算が必要。全力投球の一戦だったのです。

ところが、1番枠ということからも前に出て先行するはずでしたが、スタートでモタつき後方。「ゲートを蹴っていて遅れてしまった」と吉田隼人騎手。

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真ん中から何が行くのかな、という感じでヴィルシーナの岩田騎手。直後にニューダイナスティとトレイルブレイザーが続きます。そのインにアドマイヤラクティ。その真後ろにヒットザターゲット。スタートでいつものように後手にまわったゴールドシップが、外から仕掛けて前に上がって行きます。トーセンラーにトゥザグローリー。そしてその後ろにアンコイルド。

前半の半マイルが48秒8、1000m通過は61秒4、半分の1200m通過が1分13秒8。予想されたとはいえ超スロー。

2コーナーは内にヴィルシーナ、外にニューダイナスティ。直後のインにアドマイヤラクティ、外にトレイルブレイザー。そしてこれらをマークする形でゴールドシップ。直後の内にはヒットザターゲットがいます。中団の内にはアンコイルドとトーセンラー。

そして、それは半分の1200を過ぎたときでした。動きが激しくなり状況が一転。ハロンのラップが11秒台に上がりました。

3コーナー先頭に立ったニューダイナスティの和田騎手が押して先頭に立ちます。これにトレイルブレイザーが続き、ゴールドシップの内田騎手の手綱が激しく動きます。内でヴィルシーナとアドマイヤラクティが置いて行かれる感じ。外を仕掛け気味にトーセンラー。中団のインいたヒットザターゲットが後方に下がります。その後方にはアンコイルド。

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4角を先頭にまわってきたニューダイナスティ、2番手のトレイルブレイザーが失速気味。真ん中からトゥザグローリー、外からゴールドシップ。それに馬体を寄せてきたトーセンラー。内からアドマイヤラクティ。横に広がった叩き合いの中から、外に出したヒットザターゲットが鋭く伸びます。内から馬込みを縫うようにアンコイルドが強襲。ヒットザターゲットとアンコイルドの激しい争いは、外のヒットザターゲットが首差抑えて優勝。

「ソレーっ!」と大声援を送ったアンコイルドが悔しい2着。馬連で9万円か・・。ああ、単勝50倍だったんだけどな・・。

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それにしても、レコードタイムに0秒3差。2分22秒9は過去10年で一番速いタイム。馬力型のゴールドシップには厳しい決着になった印象です。

ひとつの神話がまたひとつGIに加わったカナロア伝説!

7   GIを勝つ馬って、どっか他の馬とは違うよね。サクラゴスペルはGIを勝つだけの、ここ一番のワンパンチが足りないんだよな。高松宮記念にしても、安田記念にしても、ここでガツンと弾ける何かが足りない。そこが歯がゆくてね」とスプリンターズS直後のレースビデオを見終えたばかりの横山典騎手が私にポツリ。 8

注目のGI「スプリンターズS」は、1.3倍と圧倒的な人気に推されたロードカナロアが優勝。GI5連勝を達成しました。

抜群のスタート、まさにロケットダッシュを決めたハクサンムーン。逆に「何が何でも主導権は譲らない」と、言っていたフォーエバーマークは、なんとスタートでモタついて、村田騎手が必死にシゴいて2番手に上がったものの不本意な競馬でギブアップ状態。パドトロワ、サクラゴスペルが2番手グループを争う形。

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少し離れたところの内にマヤノリュウジン。その直後にドリームバレンチノ、馬体を併せる感じでダッシュがつかなかったロードカナロア。その外にはマジンプロスパー。ダッシュがつかなかったグランプリボスと、アドマイヤセプターが後方の内々を追走。

前半の3ハロンが32秒9。昨年が32秒7だったことから、ほとんど同じようなペース。ただ、好ダッシュから単騎逃げに持ち込んだハクサンムーンにとっては最高の形。ロードカナロアが直線で外から来るまで、追い出しを待つ余裕さえ感じられました。

直線でフォーエバーマーク、パドトロワが脱落。逃げるハクサンムーン、懸命について行こうとするサクラゴスペル。その時でした。グーンとロードカナロアがハクサンムーンに馬体を寄せて行きます。

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それは弾よりも早く、機関車よりも強く、スーパーマンのようでした。

ハクサンムーンも目下の充実ぶりをアピールするかのような最後の抵抗を見せていましたが、大相撲で言えば、横綱白鳳。GIを勝ちまくってきた貫録、役者が数段上でした。昨年のスプリンターズSと同じく1馬身近く突き抜けて優勝。GIでは負けないロードカナロア神話が、また1ページ加わりました。

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敗れたといっても崩れないスプリンター、ハクサンムーンも2着と拍手ものの頑張り。内からしぶとく伸びたマヤノリュウジンウジン。大外から猛追したマジンプロスパーが馬体を併せて3着争いでしたが、マヤノリュウジンが頑張って3着。

またドリームバレンチノ、グランプリボスが詰め寄ったものの伸びきれず5、6着。勝ち馬と0秒3差でしたが、GIの短距離戦では、この差が実に大きいのです。ロードカナロアが短距離界のトップホースでいられるのも、ここにあるのです。

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横山典騎手と話していると、スーッと横にやってきたのが岩田騎手。「おめでとう」と手を差し出す横山騎手。「ありがとうございます。いやあ、半完歩出負けしたので、ヒヤヒヤでした」と、汗を拭う岩田騎手。手に取った冷やしてあるペットボトルを、ゴクゴクと音を立てて飲み干すと、重圧からと解き放たれた表情が印象的でした。

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