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トライアル戦、最後の砦を死守した1番人気ロゴタイプの皐月賞期待値は!?

 皐月賞まで1ヶ月を切ったこの日、中山競馬場では最後の関所といってもいいトライアル「スプリングS」が行われました。

 ここ最近、3歳戦のトライアルレースは1番人気がコロコロと転がるように敗退。なかでも弥生賞ではクラシックの西の大将格エピファネイアが4着、同じように東の横綱格コディーノが3着と揃って敗退。6番人気のカミノタサハラ、10番人気のミヤジタイガに先着されて多くの競馬ファンはガッカリ。

 共同通信杯でラウンドワールドが4着、きさらぎ賞ではラストインパクトが6着と、1番人気が基幹レースで次々敗退。それは皐月賞トライアルの若葉Sでも、圧倒的な1番人気に支持されたメイケイペガスターが、衝撃ともいうべき8着に大凡走。共同通信杯でゴットフリート以下を圧倒した強さは、微塵も垣間見ることができませんでした。優勝したのが7番人気のレッドルーラー。さらに2着が9番人気のクラウンレガーロ。

 そいったクラシック戦線に向う風の中で、朝日杯以来の登板となるロゴタイプにとっても、今回のスプリングSは安穏とした状況ではなかったはずです。

 ところが、ロゴタイプの田中剛調教師は、騎手当時から自身の身体を磨き上げることがプロの世界でいかに大事かということを、常に実践してきた人。土曜日のレースが終わると、夕日を背に一人コースを走っていた姿を、何度か見かけたことがあります。日頃のトレーニングの大切さを自分自身が身を持って体験。今回のロゴタイプの場合もしっかりトレーニングを積み重ねて臨んだはずです。それが馬体重のプラス4Kにも表れているようでした。

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 抜群のスタートを決めたロゴタイプが一旦、2番手に下げると、ワイルドドラゴンが内枠を生かして主導権。2番手に押し上げてテイエムダイパワー。その直後にロゴタイプ。Cデムーロ騎手はロゴタイプの折り合いだけを専念。それを見るように内から3番人気のタマモベストプレイ。中団にはサーストンニュースと外にはマンボネフュー。そしてアクションスターとマイネルホウオウ、その外にザラストロ。後方にはフェイムゲーム、アドマイヤオウジャ、シンネン。

 前半3ハロンが36秒8というスローな流れに、ザラストロが我慢しきれず外から一気に上位に浮上。内にワイルドドラゴン中にテイエムダイパワー、外にはザラストロ。3頭が雁行する形でレースを引っ張ります。ロゴタイプにとってはラッキーでした。前の3頭を2馬身くらい離れた後ろの位置から見る形。しかも、3角から4角にかけてロゴタイプの周りに他馬がいないので、進路、走行を邪魔されることもなく、まさに最高にスムーズな展開。

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 直線に入るやいなや抜群の手応えで、直線やや外目に出すと、一気に先頭に立ち後続を待つ余裕。ロゴタイプにすぐ内から好位置で仕掛けのタイミングを待っていたタマモベストプレイが肉迫。またロゴタイプの外からマンボネフュー。そして直線の坂を上がった辺りから大外を強襲するマイネルホウオウ。それでも、ロゴタイプの脚色は歴然。力強いフッワークでゴール板前を突き抜けました。左手をスタンドに向け、人差し指を立てて満面笑みのCデムーロ騎手。

 2番手争いは激戦。内からしぶとく伸びたタマモベストプレイ、大外から鋭く伸びたマイネルホウオウ、直線窮屈な馬込みを割ってきたフェイムゲーム。アドマイヤオウジャは馬込みのど真ん中に突入して前が壁。これには応援していた者として残念。

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 タマモベストプレイが1馬身半差で2着。クビ差でマイネルホウオウが3着。ハナ差でフェイムゲームが4着でした。

 まさに結果はロゴタイプの快勝でしたが、4着のフェイムゲームと、優勝馬はその差0秒3差。恵まれた理想的なポジションで、何の不利もなくレースが進められたことから考えると、もちろん、皐月賞の有力馬には違いないのですが、これで本番の皐月賞も安泰ということは早計。まだまだ皐月賞のドラマの筋書きは予測不可能なのです。

ラストラン!未来を背負って全力投球のストレート勝負!

競走馬にとって必ずやって来るのがラストラン。その一戦でその馬の評価が決まるとあれば、関係者にとっては、まさに全力投球、渾身の仕上げで臨むことになるはずです。

 3月10日、中山では「中山牝馬S」が行われました。このレースを最後に、現役引退を決めているスマートシルエット。それは関係者の期待を一身に背負って、その最後の勇姿を披露すべく、全力投球のストレート勝負!

 彼女にとってラストランに選んだこの中山の舞台こそが、最高のパフォーマンスを演じることができる最高の舞台だったはずです。それは、もっとも得意としている芝1800mという距離。加えて、中山が初めてといってもコーナー4つの内回り。先行力を生かすこの馬にとっては大きな後押し要因。

 しかも、今回は強力な同型馬を欠いて、単騎一人旅も期待できる展開。前走の東京新聞杯は、強力な牡馬陣を相手に、直線持ったままで2番手から先頭に立ちかける見せ場十分の内容。今回は牝馬相手にハンデが54K。休養明けをひと叩きして、調教でも抜群の動きと上々の気配。私は負ける要素が見当たらず、これは押し切れると考えました。

 スマートシルエットにとっては、府中牝馬S2着など重賞好走はあるものの重賞はまだ未勝利。それゆえ今回の中山牝馬Sは、残された最後にして最大のチャンス。優勝すれば重賞優勝馬として繁殖牝馬の価値は、何倍も何十倍も違うはず。それゆえ馬主、今後の生産者にとっても、優勝という一文字に託された期待感は、おそらく過去の比ではない、という見方をしていました。

 前日の午前中のオッズは5番人気の10倍台。ところが当日は2番人気の6倍。ビックリするくらい株価が急上昇。これは尋常ではない“大量買い”が入っていることを実感。

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 さて、注目のスタート。主導権を取ったのは好スタートを決めた1番枠のダイワズーム。2番手にスンナリとスマートシルエット。この形でも問題はないが、理想は主導権を取った一人旅と考えていた私は、やや不満が残る2番手という展開。この形でスローの直線ヨーイドンは、府中牝馬S、東京新聞杯と同じで、何かに差し込まれるかも知れないと案じたからでした。

 好位置にサンシャインが付けて、1番人気のオールザットジャズが中団。そこには4番人気のオメガハートランド。この2頭を前に見る形で内にマイネイザベル。昨年の札幌記念を制した5番人気フミノイマージンが最後方で展開。

 前半の3ハロンが37秒3、半マイル通過が49秒6。過去10年でもっとも遅いペース。

 逃げるダイワズームのペースで進み、2番手のスマートシルエット。好位置にはサンシャインという形は変わらず。4角で外からオールザットジャズが仕掛けて前に接近。そのあとには、内にオメガハートランド、外にマイネイザベル、そして大外をまわって一気に仕掛けたフミノイマージンが進出。

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 ここからゴーサインを出したスマートシルエットが逃げるダイワズームに並びかける勢いで先頭争い。頑張るダイワズーム。外からオールザットジャズ。後ろにはオメガハートランドとマイネイサベル。直後にはフミノイマージン。

 坂を上がってスマートシルエットが抜け出たところへ、外から素晴らしい伸び脚でマイネイサベルが強襲。一気に捉えてゴールイン。2着にはスマートシルエット。そしてオールザットジャズ。

 わずかに及ばなかったスマートシルエット。有終の美は残念でしたが、その先行力としぶとさは、子供たちに伝わるような気がします。

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 「本当に残念!勝った馬も取り口も、あの府中牝馬Sの時とまったく同じだものね・・」と、悔しそうに語る大久保龍きゅう舎の関係者であるK氏。肩を落として口をへの字に結んでいました。