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何度も何度もガッツポーズ!初めて手にした夢のGIタイトル!

 GI優勝は常連の岩田騎手さえ優勝となると興奮するのですから、ましてやGIレースとはまるで縁がない騎手ともなると、その興奮度はまるでオリンピックで金メダルをゲットしたかのような全身パフォーマンスで鼓舞。この気持ちわかります。
1   「ジャパンCダート」でニホンピロアワーズに騎乗。6番人気ながら見事に大金星を射止めた酒井学騎手がその人です。
 しかも、ニホンピロアワーズはこれまで重賞は未勝利。5歳の暮れにして初重賞勝ちがなんとなんとGI制覇だったのでした。ちなみに、昨年のジャパンCダートは9着と凡退。その汚名を晴らすかのような見事な快走劇。
 酒井学騎手は2001年の高松宮記念でGI初出場。それから11年目、自身11回目のGI挑戦で遂に栄冠を手にしたのでした。
 ニホンピロアワーズにとってGIというのは縁遠いものだったのです。前記したように昨年のジャパンCダートが9着で、今年1月の川崎記念が3番人気で5着。優勝したスマートファルコンから10馬身も離されてしまう悲劇に近い内容。この時点ではよもや秋のGI馬に成長するとは、ほとんどの方が容易に考えることは困難だったと思われます。

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 レースは完璧でした。エスポワールシチーが飛び出していきます。ところが逃げ宣言をしていたジャパンCダート2連覇中のトランセンド。藤田騎手が押しても行こうとしません。なにかレースに参加するのを嫌がっているような印象。それを見てホッコータルマエの幸騎手が、なんなく2番手に並んでいきます。トランセンドが3番手で、その外にニホンピロアワーズ。これを追って3番人気のワンダーアキュートも好位置を確保。断然の1番人気ローマンレジェンドは中団のイン。ダート初参戦のトゥザグローリーがいて、スタートで出遅れたナムラタイタン、ハタノヴァンクール、そして例によって出遅れた4番人気のイジゲンが後方を追走。
6_3  単騎逃げという絶好の形に持ち込めた2番人気エスポワールシチー。大ケガで加療中の佐藤哲騎手に代わって武豊騎手が騎乗。前半の3ハロンを35秒8、1000m通過が59秒8。昨年トランセンセンドが逃げたときと同じようなペース。ところが、2番手のトランセンドとホッコータルマエが、その位置で妥協したために逃げたエスポワールシチーが、後続との差をグングンと広げにかかりました。
7  ここ形でほとんど順位に変動は見られず、動きがあったのは4コーナー。大きく引き離して先頭を行くエスポワールシチー。激しくステッキが飛ぶトランセンド。内で頑張るホッコータルマエ。そのときインにいたニホンピロアワーズが、抑えきれないくらいの手応えで先行馬の直後に接近。デムーロ騎手にしごかれてローマンレジェンドが前に接近しようと仕掛けますが反応は今ひとつ。外からはジワジワっとトゥザグローリー。イジゲンの姿が大外から入って来ました。
8  そして、アッという間にエスポワールシチーを捉えたニホンピロアワーズが突き抜けます。必死で追うローマンレジェンド、ワンダーアキュートの人気馬。
 ところが、抜け出してから本気モードで追い出されたニホンピロアワーズの快走を、他の馬はもう止められません。そしてゴール手前から他が接近してこないということもあってか、酒井学旗手が「やったー!」とばかりに左拳を前に突き出します。そしてその手を高々と上げてガッツポーズ。さらにゴール板前でも喜びと感激のガッツポーズ。戦い終えて流しているときにもガッツポーズで、ニホンピロアワーズの首をポンポンと叩き感謝の愛情表現。
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 結局、3馬身半差のワンサイドレースでした。好位にいたワンダーアキュートが内で粘るホッコータルマエを、なんとか半馬身捉えて2着。ローマンレジェンドは伸び脚を欠いて4着に敗退。
 一方で逃げたエスポワールシチーは、ラスト36秒4という速い決着に対応できず10着に凡退。過去10年で7歳馬の連対はゼロ。7歳のエスポワールシチーには次世代という波が押し寄せてきたようです。
 シンガリ負けだったトランセンドの復活劇はあるのでしょうか。注目されたイジゲンはブービーに敗退。ただし、こちらは3歳馬。課題を克服して来年の飛躍を期待したいものです。
 私が期待したトゥザグローリーが12着。ゲートでトモを滑らせて出負け。それでも3角から4角と外をまわり進出して見せ場十分。有馬記念2年連続3着馬。復活の足掛かりを掴んだようでした。

王者を弾き飛ばして優勝をもぎ取った女傑ジェンティルドンナのド迫力に仰天!!

13  「僕の馬は真っすぐに走ってきているのに相手は内から急にぶつけてきました。これでバランスを崩して、手前を替えたりしたので・・。あの着差でしたから本当に悔しいです」と、憤懣やる方ないという表情で、薄っすらと涙を浮かべ、唇を噛みしめる池添ジョッキー。
 注目のジャパンカップは豪華メンバーが参戦。話題は凱旋門賞で惜しくも2着と惜敗したオルフェーヴルが、今回はホームの日本で、凱旋門賞馬ソレミアを迎え撃って雪辱なるか、という大きなテーマをもった一戦でもありました。当然ながら1番人気は我らが王者オルフェーヴルで2.0倍のオッズ。
 以下、宝塚記念でオルフェーヴルに続く2着だったルーラーシップ。そして今年の牝馬3冠に輝いたジェンティルドンナ。ダービー、天皇賞ともに2着のフェノーメノと続きました。
 戦前の予想では強力な逃げ馬を欠いて、1番枠を引いたビートブラックが押し出されるように主導権を取り、スローで流れそうだということは想像がつきました。そうした流を読むことが、今回のジャパンカップを占う上で大きな要素を占めていたように感じます。
 その核心部分を踏まえて最大限に能力を出し尽くしたのが岩田・ジェンティルドンナ。
「今日の馬場状態を見て、これは内にこだわったほうがいいと思いましたね」と岩田ジョッキー。ところが生憎にも外の15番枠。それでも思い切って前に出て行き、内の経済コースを走らせよう、という作戦が出来上がったのです。ローズSで積極策から成果を得た作戦そのものでした。
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 ポンと飛び出したビートブラック。外から昨年のJC2着だったときと同様にトーセンジョーダン。その間にジェンティルドンナ。フェノーメノが前の3頭を見る形。凱旋門賞馬ソレミアがいます。エイシンフラッシュとローズキングダムが中団で、その後ろにはオルフェーヴル。後方にダークシャドウ。スタートで出遅れたルーラーシップが最後方グループのインを追走。
 前半の1000m通過が1分0秒2。半分の1200m通過が1分12秒3。予想されたこととはいえスロー。ほとんど各馬の位置取りは変わりがありません。局面が大きく変化したのは3コーナーでした。一気に捨て身の勝負に出たビートブラックが後続との差をグングンと広げて行きます。2番手がトーセンジョーダン。3番手のジェンティルドンナは、前の2頭が相手ではない、と動かなかった為にトーセンジョーダンと離れた形。ソレミア、フェノーメノ。オルフェーヴルは後方グループでダークシャドウの外に出します。ルーラーシップも同じ位置でイン。
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 後続を大きく離して4コーナーを回ったビートブラックをトーセンジョーダンが追います。ジェンティルドンナは最内にピッタリ張り付いてジッと追い出しを我慢。フェノーメノ、ソレミア、ローズキングダムが好位。そのときオルフェーヴルがスーと前に進出。
 必至に逃げ込みをはかるビートブラック。トーセンジョーダンの脚色が鈍り出し、ソレミアも失速気味。そのときでしたオルフェーヴルが一気に2番手に進出。内からジェンティルドンナが追撃態勢。
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 ところが、ここで問題のシーン。逃げるビートブラックの直後に迫っていたジェンティルドンナ。前のビートブラックが邪魔になり、ピタッと外にいたオルフェーヴル目がけて馬体をぶつけにいきました。パーンと外に弾き飛ばされたオルフェーヴル。それでもふらついた馬体を立て直し、手前を変えながら巻き返しに行きます。長い2頭のマッチレースは、オルフェーヴルがゴールでハナ差まで詰め寄ったところで決着。
 外からルーラーシップが猛然と追い込んで来ましたが、ダークシャドウを捉えるのがやっとでした。フェノーメノは伸びを欠き5着。
 審議のランプが点りましたが入線順で決着。「この判定には納得できない」と池添騎手。また池江寿師も「ぶつけられて態勢を崩したし、手前も変えてしまっている。なんとも割り切れない」と、怒りをあらわしていました。

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 競馬は150周年を迎えた記念すべき年。その代表的な国際招待のジャパンカップで、今ひとつ後味の悪い結末。ジェンティルドンナの岩田騎手は、騎乗停止2日間のペナルティー。この程度のエキサイティングプレーは降着までとは至らないということなのでしょうか。笑みのない岩田騎手の表情が晩秋の競馬場の空に印象的でした。