

23歳を迎えたばかりの若き獅子は、少し哀しげな表情でこう切り出したのでした。
「ファンの皆さんもご存じの通り、昨日、僕の不甲斐ない騎乗で、騎乗停止になってしまい、エフフォーリアは良く頑張ってくれたのですが、心の底から喜べないのが残念です。本当に申し訳ありませんでした」。
そう言うと深々と頭をスタンドに向かって下げました。騎乗義務違反があったとはいえ、その言葉一つ一つには若者らしく清々しささえ感じることが出来ました。
第66回グランプリ
「有馬記念」。この日、1番人気に推された3歳の
エフフォーリア。
鞍上に
皐月賞、
天皇賞・秋で制した
横山武史騎手。4日前に23歳を迎えた彼に降りかかった裁決。
有馬記念の前日の新馬戦で、圧倒的1番人気に推されたヴァンガーズハートに騎乗。ゴール前で楽に抜け出したのですが、決勝線手前で追う動作を少し緩めたところに、内から強襲した
ルージュエヴァイユにハナ差負け。
JRAの裁決は騎乗義務違反で騎乗停止の判定。このことがあって、
有馬記念の舞台では、遂に笑顔を見ることが出来ませんでした。
ジャパンCをパスして
有馬記念一本に仕上げて来ているエフフォーリア。
秋の天皇賞で
コントレイル、グランアレグリアの歴史的横綱を一蹴。当然、古馬最後の大一番、
有馬記念は多くの支持を集めていました。

エフフォーリアは中団の外に待機。その内側に凱旋門賞に参戦したライバルの女傑クロノ
ジェネシス(2番人気)。この2頭の前に同じく凱旋門賞帰りのディープポンド。それらの人気馬をマークするように、出遅れたステラヴェローチェが背後で徹底マーク。

緩みないペースで果敢に逃げまくるパンサラッサ。離れた2番手を進んだのが
菊花賞馬
タイトルホルダー。直線で我慢できないとばかり先頭に躍り出た
タイトルホルダー。その外からディープポンド。そして、外からエフフォーリアにフタをされた感じで、モタついているクロノ
ジェネシスを尻目にエフフォーリアがスパート。それに続けとクロノ
ジェネシスとステラヴェローチェが外から並んで追い込んで来ました。
抜け出したエフフォーリアが内でしぶとく粘るディープポンドをねじ伏せてトップでゴールイン。クロノ
ジェネシスとステラヴェローチェも迫りましたが、エフフォーリアに並ぶまでは行きませんでした。

横山武
騎手は名物となったオーバーアクションのガッツポーズを封印。そして笑顔もなし。ウイナーズサークル近くのスタンドでファンに向かい、馬上から深々と腰を折りました。

父、典弘
騎手を筆頭に横山家3人が騎乗した記念すべき
有馬記念。それは典弘
騎手に続く親子制覇のグランプリ
有馬記念でもありました。
