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突然の激しい雨の中でクラシック制覇の雄叫びを君は聞こえたか!!

刻々とクラシックの歴史的瞬間が迫っていたときでした。一転、多摩丘陵のほうから押し寄せてきた黒い雲が、あっという間に上空一面を覆うようになったとき、ポツポツと雨が・・。突然に様相を豹変してザーッという雨音に変わり、スタンドの地面を激しく叩きつけていました。

急に薄暗くなった東京競馬場は、ダートコース内に急に水が浮き出し、これに競馬場の照明がキラキラと水面に反射して、これから始まろうとしている3歳牝馬の女王決定戦「オークス」は、ただならぬ雰囲気を醸し出していました。

0525_01 今年の優駿牝馬「オークス」は、圧倒的な強さで勝ちまくってきたレーヴディソールが無念の故障でリタイア。そこで台頭してきたのが、相撲で言えば東西の大関格、桜花賞馬マルセリーナ。そして桜花賞2着のホエールキャプチャの2頭。桜花賞の内容からは、この2頭のマッチレース!との声が圧倒的でした。

ところが、この人気の2頭は共に同じような追い込み脚質。しかも、距離の経験がマイル戦までしかなく、いきなり2400mでは本当に大丈夫なのか。さらに、重馬場で走った経験もないことから大きな不安が感じられて、これは1着どころか2着、いや3着さえ危ないかも知れない。

私は予想で、1枠1番のハブルバブル◎を打って期待を寄せていました。2400mとはいかないまでも、芝1800mを2度経験しているし、そのなかのデビュー戦の圧勝劇が、際立ってレベルが高かったことから、強運男ウイリアムズ騎手のコンビを大きく買っていたのです。ところが、スタンド前の発走と歓声、そして強い雨に驚いたのか、口を割って頭を上げ、引っかかるように力んで走っているのです。

レースは思わぬ展開でした。楽にシシリアンブリーズが主導権かな、と考えていたら大外から飛び出したのが柴田善騎手のピュアブリーゼ。一気に先手を取ると馬の行く気に任せている感じで、スイスイと逃げ足を伸ばします。2番手が遅いペースと丸田騎手が読んだライステラス。シシリアンブリーズがいて、内に掛かり気味だったハブルバブル。スピードリッパーにエリンコート。後方に出遅れたホエールキャプチャ、マルセリーナ、グルヴェイグの人気3頭が牽制しながら追走。0525_023

逃げたピュアブリーゼが直線に入って、一瞬引き離すような展開になったものの4角で好位置に進出したエリンコートが接近。直線ではホエールキャプチャが大外から脚を伸ばします。マルセリーナもやってきました。スピードリッパーも頑張っているぞ。私の本命ハブルバブルも好位置でしぶとく馬群を割って伸びかけたときに、外の各馬に伸び負けすると、脚色が急激に減退。

さあ、ゴール前でもしぶとく頑張るピュアブリーゼに、その外から伸びたエリンコートが抜け出す勢い。大外からグイグイと追い込んだホエールキャプチャ。この3頭が馬体を併せて激しい叩き合い。その結末は間を割って出たエリンコートが、内で必至に粘るピュアブリーゼと、外から詰め寄ったホエールキャプチャを振り切って優勝。してやったりの後藤騎手。0525_045

これまで重賞に挑戦することがなかったエリンコート。オープン特別の忘れな草賞を勝ったことでオークスに挑戦。日陰の道をひたすら歩んできた馬が、桧舞台で頂点に立った瞬間に輝いて見えました。

父のデュランダルは強烈な決め手でスプリンターズS、マイルチャンピオンシップで優勝。短距離色のイメージが強い馬でした。母のエリンバードも短距離で活躍。ところが、エリンコートの走法は父とも母とも似かよったところがなく中長距離系そのものです。初めてのクラシック馬を送り出したデュランダル。今後の産駒の評価に大きく含みが出てきました。

逆にスタミナの配合を持つピュアブリーゼ。2400mの舞台で本領発揮でした。果敢に先行策を取った柴田善騎手の騎乗も光ります。ゴール前で接触する不利がなかったら・・と思うと実に惜しい一戦でした。

出遅れたホエールキャプチャが地力で3着。これも敗れはしたものの立派。一方、マルセリーナは最後方近くで展開。いきなりの重馬場で2400m。ベストが桜花賞のようなマイル戦なのかも知れません。それでも4着は能力高さでしょうか。

3歳牝馬路線は、まだまだ混迷が続きそうです。ひと夏を越した秋華賞がまた違う結果になっているような気がします。

予想外!猛烈ペース。未体験の流れに戸惑った稀代の女王ブエナビスタが惜敗!!

 前半の3ハロンが33秒5。半マイルは44秒6。まさかこんなペースになろうとは誰が予測できたでしょうか。このことが女王ブエナビスタの連覇を阻むことになったのだと思います。
 戦前の予測では、おそらくブリンカー着用のオウケンサクラが好枠で逃げるだろう、とくに競りかけて行きそうな同型がいなかったことから、オウケンサクラのマイペースで、ややスローに近い流れを考えたのですが、ブエナビスタの岩田騎手もそういう意識があったと思います。ただ、目標とする2番人気のアパパネが中団で展開していることから、これを直後で見る形。流れを考慮すると、これはこれで当然、とも思える位置取りだったと思います。0518_0102
 ところが、オウケンサクラの単騎大逃げ。このペースに対応できたのがアパパネ。前走のマイラーズCでマイル戦を経験している強味が生きました。直線で先頭に立ったレディアルバローザ。それをゴール前で捉まえたアパパネ。直線外からブエナビスタ。この息詰まる女の凌ぎ合いは、アパパネがブエナビスタの猛追を首差振り切って優勝。
 「絶対に外からブエナビスタが来ると思っていたから、先頭に立ったときは、なんとか凌いでくれ!と思って必至に追いましたよ」と蛯名騎手。 0518_0304
 一方、ブエナビスタの岩田騎手は「直線でもっと楽に前に取り付くことが出来ると思ったんですが、意外に手間取ってしまって・・」と、肩の力を落としていました。
 勝ちタイムが1分31秒9、昨年のブエナビスタが接戦をモノにしたときの時計が1分32秒4。結局、このマイル戦の超高速決着に対応できたかどうかの差が結果に出てしまいました。ブエナビスタにとっては1年ぶりのマイル戦。どんな馬でも、どんな強い馬でも、今日はどれくらいの距離を走るかなんて、わかるわけがないのですから、いつも2000m以上を走ってきたブエナビスタに、いきなりマイル戦、それもレコード決着に近い時計の勝負は、あまりに可愛そうでした。
 それでも首差2着と詰めよったところに、女王ブエナビスタの稀代の女王たる所以があるわけです。もう、マイル戦を走るようなことはないと思いますが、優勝したアパパネ以上にブエナビスタの力走が心に強く残るレースでした。
 東京のマイル戦ということで、2戦2勝のアプリコットフィズに密かに期待を寄せていたのですが、まるで凧糸が切れてしまったような走りでシンガリ。時計は自らがクイーンC優勝で計時したときと同じ1分34秒4。0518_05当時、ラスト3ハロンを、余裕を残して35秒1でしたが、今回は37秒3。2秒以上も遅い時計。あのときのアプリコットフィズの姿はありませんでした。彼女になにがあったのか。
 「なにかキッカケが必要なのかも知れない」と武豊騎手。本馬場の調教は文句なしの素晴らしい動き。内と外から馬体を併せられると、闘争本能が消滅してしまうのが現在のアプリコットフィズのような印象があります。
 小島太調教師もお手上げといった感じのようですが、諦めず彼女の復活走を待っているファンは少なくないはずです。思い切って逃げるとか、最後方から直線勝負に賭けるとか、メンタル面等の治療も必要のような気がします。そのときこそが、アプリコットフィズの本物の姿のような気がしています。0518_06