熱い!桜花賞強力3頭の女の戦い

 すでに1ヶ月を切ったクラシック第1弾、桜花賞。先週の桜花賞トライアル・フィリーズレビューはアストンマーチャンが断然の強さで後続を圧倒。1・1倍という一本人気を制して、桜花賞に力強く漕ぎ出しました。
 そもそもアストンマーチャンは、昨年暮れのGⅠジュベナイルFでウオッカに首差敗れて以来、来る桜花賞でどのような戦術を組んだら逆転できるのか、というテーマを持って今回のフィリーズレビューは臨んだはずです。それゆえ武豊騎手の頭の中には、一緒に走っていた他の馬のことなどは、眼中になかったことでしょう。
 「4角まで折り合いだけを気をつけて流れに乗りました。直線での手応えは抜群だったし、ラストの伸びも良かったですよ。この距離(1400m)は本当に強いですね。次回の本番(桜花賞)は強い馬が出てくるけど、今日のように我慢がきくことができればチャンスはあると思います」と、桜花賞に思いを馳せる武豊騎手。

 今年の桜花賞はウオッカを中心とした3強ムード。トライアルのチューリプ賞で、ウオッカと首差で渡り合ったダイワスカーレット。ラスト33秒台の決着で後続が6馬身差も水が開いた次元の違う両頭。そして、前記アストンマーチャン。近年に珍しいほどの大変な逸材の揃い踏み。ウオッカは父がタニノギムレットで、ダイワスカーレットがアグネスタキオン。アストンマーチャンがアドマイヤコジーン。いずれも内国産種牡馬産駒。
 それぞれの馬に、それぞれの思いを重ねながら、迫ってきた桜花賞、そしてオークスの熱い女の戦いは、さぞかし見応えがありそうです。

届いたミッキーからの挨拶状

 3月1日
 松永幹夫調教師から挨拶状が家に届きました。
070314_1  この度、3月1日付をもちまして 新規開業することになりました
 全く無縁だった競馬の世界で今日あるのも貴殿をはじめ多くの方々のお陰と深く感謝いたしております
 これから新しい慣れない立場ではありますが 初心に戻って全力を挙げてご期待に添うべく努力する所存です
「零」からの出発ですが これからも末永くご支援 ご鞭撻をよろしくお願い申し上げます

 実に丁寧な文面でした。彼の性格の律儀さがよく出ているものでした。
 あれからどのくらい立つでしょうか、京都、都ホテルで行われた彼の結婚式に招待を受けました。多くの招待客、来賓客が列席している中で、帰り際、彼はボクの手を取って、
「わざわざ京都まですみません。これからもよろしくお願いします」と、送り出してくれました。とても心地よい気分で帰京したことを覚えています。
 騎手当時、レース後のインタビューでは実に丁寧にコメントしてくれる、記者仲間でも評判のジョッキーの一人でした。常に相手のことを思いやるような優しさがありました。

 そういえば、忘れられないこんなエピソードがあります。
 それは1992年の菊花賞。この年、大変な馬がクラシックの主役にドーンと、居座っていました。デビューから7戦7勝、無敵の快進撃を続けるミホノブルボン(松元茂きゅう舎)です。むろん、皐月賞、ダービーも連勝し2冠馬。いよいよ4歳(現3歳)最後の砦、菊花賞を迎えようとしていました。
 ミホノブルボンの父はマグニテュード。その産駒は短距離戦で活躍、スプリンター系というイメージから、3000mの距離に不安視する向きもあったのです。
 菊花賞で松永幹夫騎手はキョウエイボーガンに騎乗してきました。
「いやあー、ビックリしましたね~。こんなスピード馬がなんで3000mなんて使うのだろう、無茶やるなあ、と思いましたよ」

 ブルボンよ、ガンバってくれよ~!

 「そこでね、ボクはみんなの、ブルボンの邪魔をしないように、1200mの競馬をしてやろうと思いましたよ」
 レースは松永ボーガンが思い切って飛び出し、11秒台の速いラップが刻まれていく。ところが、ところがなのです。
 彼はこういいます。
 「いやあ、参りましたよ、だって迷惑かけないように、ボクのだけ違う競馬をしようと思って乗っていたら、なんとブルボンが一生懸命に追いかけて来るんですよ。わあ、ブルボン、ボクに構わないで・・と思ってもブルボンは来るんです」
 「それでね、4コーナーでブルボンに交わされていくときに、手綱を追いながら、ブルボン、ミホノブルボン、頑張ってくれよ~!って、ブルボンの後ろ姿を見ながら応援していました」
 ところが、結果はダービー2着のステイヤー、ライスシャワーにゴール前で交わされ3冠の夢が消滅。とはいえ、ゴール前でインから伸びてきたマチカネタンホイザに完全に交わされながら、なんとゴール寸前でまた盛り返し2着に浮上。このガッツ、この勝負強さにスタンドから大歓声と拍手の嵐。
 「2着でしょう。なんか乗っていた小島貞さんに申し分けなくて、しばらく顔も合わせることが出来ませんでしたよ。でも、挨拶しておかないと、という思いから、決断して謝りに行きましたけどね。ああ、いいよいいよ、と言ってくれました」
 「だから菊花賞と聞くと、ブルボンを思い出しますねー。いまだに小島貞さんの顔を見ると、ああ申し訳ないって・・」と、苦笑いを見せながら、当時のことを振り返ってくれたことを、思い出します。私は彼の言葉の随所に、彼の優しさを感じたものです。

  あのミホノブルボンの菊花賞から、14年半という歳月が流れました。松永幹夫ジョッキーは、こだわったステッキを置き、今年の3月にきゅう舎を開業。その中の1頭、ハギノルチェーレが、先週の桜花賞トライアルのフィリーズレビューで3着に好走。桜花賞出走のチケットを手にしました。桜花賞は過去に、キョウエイマーチ、チアズグレイスで優勝。再び、あのミッキー(松永幹夫騎手当時の愛称)スマイルを、ウイナーズサークルで見たいものだと思います。ファンの一人として・・。