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今年も単勝1倍台の断トツ人気馬が崩れ去った天皇賞・春のミステリー!?

一昨年のオルフェーヴルが11着、そして昨年のゴールドシップが5着。過去10年で1番人気馬がディープインパクトを除いては、すべからく大崩れしている摩訶不思議さ。

「今年の1番人気キズナは大丈夫さ。これまでの1番人気とは違うよ。絶対勝つ!マジだぜ」

「3000mが初めて?なにを言うの!ダービーだって強かったし、凱旋門賞4着だよ!負けるわけないさ!」

「もしキズナが3着を外すことがあったら競馬をヤメルよ。それだけこれは自信があるんだ!」

競馬ファンのキズナに寄せる思いは、まさに“不動”の観がありました。昨秋の凱旋門賞以来となった直前の大阪杯を、ラスト33秒9という凄い脚で圧勝。本番の天皇賞に向けて、まさに順風満帆のようにも見えたのです。ところが、今にして思えば、このとき前を行く馬と後続が離ればなれという極端な展開で、キズナにとって4角からかなり無理を強いられた競馬になったような気がします。

そして天皇賞の本番は外枠14番。ここからいつものように最後方で展開するにせよ、スローで枠順的に外々とまわるハメになってしまうかも知れない。それに直線は外に出すだろうし、距離的な面のコースロス。そして直線でまた33秒台の脚を要求されるわけで、キズナの武豊騎手とて決して安穏とした気持ちにではいられなかったはずでした。

しかも、今年の天皇賞は先行して優勝した馬がいるものの強力な逃げ馬が不在。こうなると、縦に長い形の展開は考えにくく、各馬一団となった展開を予測していました。

ということは、枠順の内外の差が如実に出やすく、一団の中団、ないし後方で外々とまわって走る馬とでは、インをピッタリに走る馬に比べて、距離的なロスは火を見るよりも明らか。しかも3200mもあるわけですから、いかにインに張り付いて直線は間を、あるいは直線だけ外に出して伸びてくる馬が一番怖いと考えていたのです。

スタートでゴールドシップが悪癖の出遅れが再発。大きく出遅れてしまいました。主導権を取ったのが2枠の黒い帽子サトノノブレスとサイレントメロディ。そして1枠のアドマイヤフライト。外からヒットザターゲットが接近。レッドカドーにアスカクリチャンが好位インを追走。その真後ろのラチ沿いにホッコーブレーヴ。外々をまわる形でデスペラードとジャガーメイル。中団の内にフェノーノメ。その直後の内にウインバリアシオン。

002003   後で考えてみると、中団のインにはホッコーブレーヴ、フェノーメノ、ウインバリアシオンという順で並んでいたことが、結果に大きく結びつくのですが、この時点ではまだ私の脳裏にはありませんでした。

そして、後方にはタニノエポレット、その後ろにキズナ。少し離れて最後方をゴールドシップ。

1周目の1コーナーで逃げるサトノノブレスの外にアスカクリチャンが顔を覗かせて来ました。3番手にヒットザターゲット。ここからやや離れてラストインパクトが進出。

中団のインにフェノーメノ。ホッコーブレーヴが直後にいて、ウインバリアシオンは後方5番手に下がります。その後方にキズナ、ゴールドシップは相変わらず。

3角手前の1マイル標識が1分37秒6を計時。やや遅い流れで流れて行きます。そして、2000m通過が2分3秒4と、1ハロンが13秒近いペースにまたペースダウン。

そして、坂を上って下る3コーナーでもポジションの大きな変動はなく、坂を下ったあたりから徐々に動きが出てきました。

004005006 インピッタリと走るサトノノブレスの近くまでジンワリと外に出したフェノーメノが接近。これを見て外からウインバリアシオンが進撃態勢。キズナも外から前との差を縮めにかかろうと外から追い出し体勢。

4コーナーをまわり直線は、内にサトノノブレスがしぶとく粘り、それを捉えようとラストインパクト。その外から早くもフェノーメノが馬場の中ほどから先頭に並びかけて行く構え。それを見てウインバリアシオンが外から追い出しをかけます。それに続こうとする大外のキズナ。その後ろにゴールドシップ。フェーノメと外からウインバリアシオンがグイグイと伸びて来ます。大外からキズナ。そのときでした。中団のインにいたホッコーブレーヴが外に出し、キズナに並びかけて行きます。

フェノーメノ、ウインバリアシオンの叩き合いに、ホッコーブレーヴが加わって、キズナはやや脚色に鋭さがありません。ゴール前は3頭並んでドッと入りました。優勝はフェノーメノ。2着が辛くもウインバリアシオンでハナ差ホッコーブレーヴを抑えて2着。3着とはいえホッコーブレーヴの脚が際立ち、ゴール板前を過ぎて先頭でした。キズナは4着。ゴールドシップは7着。

007008009010 レース前にウインバリアシオンのシュタルケ騎手が、落馬負傷で武幸四郎騎手にチェンジというアクシデントがありましたが、幸四郎騎手は兄の騎乗するキズナをマークしながら、彼なりによく騎乗していたと思います。

ホッコーブレーヴに差し込まれたキズナは距離が応えた印象。ゴールドシップはいつもスタートがカギですね。それに高速馬場は疑問です。

2連覇を決めたフェノーメノ。疲労を考慮して宝塚記念を使わず、秋に備えるというスケジュール。こういった調教師の英断も連覇の陰にあるようです。

衝撃!“1分31秒4のレコード”これで本当に大丈夫なのか?!

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 凄い時計が出ました。「1分31秒4」のレコード。まさかこのメンバーでレコードが出るとは微塵も感じていませんでした。

 それというのも、かつてのシルポートのような強力な逃げ馬が不在で、スローはあってもハイペースはない、という見方をしていました。決してそれは間違いではなかったと思います。

 おそらく押し出される形でカオスモスが主導権。そう、カオスモスの一人旅になるに違いない、というシミュレーションが頭の中では出来ていました。開幕週でもあるので前残り確実。有力人気馬はフィエロにしてもエキストラエンドにしても、いつものように後方で末脚を温存。直線勝負い違いないと、頭の中をレース映像が駆け巡っていました。

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 ところが、今回カオスモスは和田騎手がテン乗り。それでも主導権を主張すれば先手は取れたのですが、2、3番手でもいいや、という気持ちの上で余裕があったのでしょう。隣の枠のレッドアリオンが前に出てきて、カオスモスの外に並んできました。和田騎手はここで、どうぞとばかり控える形となってしまったのです。そうすると、内からダノンンプログラマーが2番手を窺う勢いで進出。

 前半の入り3ハロンが34秒9、3年前にシルポートが逃げ切ったときが35秒0、その前の年のリーチザクラウンが先行策から押し切ったときが34秒8。そのときと同じようなペース。ともに1分32秒台の決着でした。これは今年も1分32秒台の決着になる公算が大という思いにかられていました。

 ところが、半マイル、つまり800m通過が46秒4で、そして1000m通過がなんと57秒8。一向にペースが落ちず、これは考えていた以上に速い決着になるかも知れない。カオスモスは大丈夫か、ゴールに向かって私には暗雲が漂って来たのです。

 レースに戻ると、先頭はレッドアリオンで、2番手にカオスモス、その内にダノンプログラマー。オースミナインを抜いてワールドエースが4番手に進出。おっと、追い込みのワールドエースが好位置で対応しているではありませんか。いくらなんでも位置取りが前過ぎるだろう、という思いが脳裏を過りました。

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 ところが、さすがにフィエロの武豊騎手。これは前残りの競馬になる、ということからワールドエースの直後に陣取るという、いつになく積極策。さらにエキストラエンドも今回は後方ではなく中団で、前にフィエロを見てスパートを狙っています。

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 そして、6ハロン通過が1分9秒2で、直線に入って来ました。逃げるレッドアリオンに並びかけようとするカオスモス。それを見ながらジワジワとワールドエースがスパート態勢。仕掛けると迫力の末脚で一気に上昇。1400m通過が1分20秒1というハイラップ。ここで前を捉えたワールドエースが抜け出し、外からグイグイと伸びてきたフィエロを振り切ってゴールイン。フィエロが及ばず2着。そこから2馬身も離れてエキストラエンド。驚きの1分31秒4、まさにレコード決着でした。

人気馬同士の決着になったとはいえ、優勝したワールドエースは今回が初めてのマイル戦。ほとんど2000m以上で競馬をしてきた馬。1年8カ月も屈腱炎で長期休養を余儀なくされていた馬が、ひと叩きしただけで、いきなりこんな芸当ができるものでしょうか。さすがに皐月賞2番人気、ダービー1番人気の勲章を持つ馬です。

とはいえ、現在のサラブレッドの極限に近い時計で走れば、走るほど、競走馬にかかる負担は大きいのです。地球の大地をケタ違いの脚で叩きつけるわけですから、その代償は少なくないと思います。

5歳世代の大将格と言われたワールドエース。長い暗黒の休養から復活して、これからなんとか無事にGI路線を駆け巡って欲しいという思いは競馬ファン共通の願いです。

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